「難消化性デキストリン マルトデキストリン 違い」と検索したあなたは、おそらくそれぞれの成分の特性や用途、健康への影響について詳しく知りたいと感じているのではないでしょうか。どちらも「デキストリン」と名の付く似たような素材ですが、その構造や働き、使われる場面には大きな違いがあります。
この記事では、難消化性デキストリンとマルトデキストリンの違いについて、構造的な視点からはじまり、消化性、機能性、食品への利用実例まで幅広く解説します。水溶性食物繊維としての役割や、トクホ・機能性表示食品での使われ方など、初めての方にもわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
-
成分構造と消化性の根本的な違い
-
健康機能性と期待される効果の違い
-
食品や飲料への使われ方の違い
-
特定保健用食品や機能性表示食品での扱いの違い
難消化性デキストリンとマルトデキストリンの違いとは
-
デキストリンの基本構造と分類
-
難消化性とマルトの製造方法の違い
-
消化性と体内での挙動の比較
-
甘味・粘度・溶解性の違い
-
水溶性食物繊維としての機能性
デキストリンの基本構造と分類
デキストリンとは、でん粉を加水分解して得られるグルコースが連なった多糖類です。でん粉自体がブドウ糖（グルコース）の重合体であり、その構造にはアミロースとアミロペクチンという2種類の成分が含まれます。アミロースは直鎖構造、アミロペクチンは枝分かれした構造を持っており、これらが分解されることでデキストリンが生成されます。
このときの分解の程度によって、デキストリンはいくつかに分類されます。具体的には、**DE値（Dextrose Equivalent）**という指標を用いて分類され、これは還元糖の含有量を示します。DE値が高いほど分子が小さく甘味が強くなり、低いほど分子が大きく甘味が弱くなります。
例えば、DE値が20以下のデキストリンは「マルトデキストリン」と呼ばれ、エネルギー補給目的で使用されることが多いです。一方で、さらに構造が複雑で消化されにくいものが「難消化性デキストリン」に分類され、こちらは水溶性食物繊維として整腸や血糖値の抑制といった健康効果が期待されています。
このように、デキストリンはその分解度合いと構造の違いによって、使用目的も大きく異なる成分として扱われています。
難消化性とマルトの製造方法の違い
難消化性デキストリンとマルトデキストリンは、どちらもでん粉を原料として作られますが、製造方法には明確な違いがあります。
まずマルトデキストリンは、酵素や酸を使ってでん粉を部分的に加水分解し、比較的分子量の大きい糖類を得る方法で製造されます。この工程は比較的シンプルで、最終的に得られるのは主にα-1,4結合による直鎖型の構造が中心です。甘味がほとんどなく、エネルギー源として活用されることが多いです。
一方、難消化性デキストリンはさらに一歩進んだ製造工程を経ます。でん粉に微量の酸を加えて焙焼（加熱処理）し、さらに酵素を加えて消化可能な成分を取り除いたあとに残る、消化されにくい部分だけを抽出・精製したものがこの成分です。この工程ではβ結合やレボグルコサン構造など、ヒトの消化酵素で分解されにくい特殊な結合が生成され、これが難消化性の由来となっています。
つまり、マルトデキストリンは比較的単純な加水分解によって得られるのに対し、難消化性デキストリンは高度な加工と選別を経て生まれる、より複雑な構造のデキストリンです。その結果、栄養補給用と機能性食品用という、まったく異なる用途で使われることになります。
消化性と体内での挙動の比較
デキストリンには「消化されやすいタイプ」と「消化されにくいタイプ」があり、それぞれ体内での動きが大きく異なります。マルトデキストリンはその名のとおり消化性が高く、摂取後すぐに消化酵素によって分解され、ブドウ糖として小腸で吸収されます。これは、α-1,4結合というヒトの消化酵素にとって分解しやすい結合が中心だからです。
一方で、難消化性デキストリンは意図的に「消化されにくい構造」を残すように作られており、小腸ではほとんど分解されません。α-1,6結合に加えて、ヒトが持たない酵素でしか分解できないβ-1,2やβ-1,3といった特殊な結合が含まれているためです。
このため、難消化性デキストリンは大腸まで届き、腸内細菌のエサとして働きます。そこで短鎖脂肪酸が生成され、腸内環境の改善や整腸効果、さらには血糖や脂質の代謝にも関与すると考えられています。
このように、マルトデキストリンは速やかにエネルギーになる一方で、難消化性デキストリンは食物繊維としての機能性を発揮するという、真逆の特性を持っているのが特徴です。
甘味・粘度・溶解性の違い
マルトデキストリンと難消化性デキストリンは、甘味や使い心地といった物理的な特性にも明確な違いがあります。
まず甘味についてですが、マルトデキストリンは加水分解の程度によってはわずかに甘味を感じることがあります。とはいえ、砂糖ほどの強い甘さはなく、DE値（デキストロース当量）が高いものほど甘味は強くなります。それに対して、難消化性デキストリンの甘味は非常に弱く、感じられないことも少なくありません。
粘度について見ると、両者はどちらも比較的「低粘度」ではありますが、マルトデキストリンのほうがややとろみを持ちやすい傾向があります。難消化性デキストリンは水に溶かしても粘度がほとんど出ないため、飲料などに加えても違和感なく使用できます。
そして溶解性についてですが、どちらも水に溶けやすい性質を持っています。ただし、難消化性デキストリンは粒子が細かく、熱や酸にも強いため、より幅広い食品・飲料に安定して使用できる点が強みです。
このように、風味や使用感においては難消化性デキストリンの方が「無味・無臭・低粘度・高安定性」と、加工食品との相性が非常に良い特性を備えていると言えるでしょう。
水溶性食物繊維としての機能性
水溶性食物繊維には、腸内環境の改善や血糖値の上昇抑制といった多くの生理作用があることが知られています。難消化性デキストリンとマルトデキストリンのうち、水溶性食物繊維としての機能を持つのは難消化性デキストリンです。マルトデキストリンは主に消化吸収されるため、食物繊維とはみなされません。
難消化性デキストリンは小腸で消化されず、そのまま大腸に届くという特性を持っています。ここで腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸が生成されます。この短鎖脂肪酸が腸を刺激し、蠕動（ぜんどう）運動を促すことで、便通の改善につながると考えられています。
さらに、水溶性であるにもかかわらず低粘度という点も大きな特徴です。一般的な水溶性食物繊維（グアーガムやペクチンなど）は粘度が高く、飲料などへの応用が難しい場合があります。それに対して難消化性デキストリンは粘性がほとんどなく、味や食感への影響が少ないため、幅広い食品・飲料に使われています。
このとき、血糖値の上昇抑制や脂質代謝への効果も確認されており、機能性表示食品としての活用例も増えています。多くのトクホ飲料やサプリメントにも使われている理由は、こうした安定した機能性と使いやすさにあります。
水に溶ける性質を持ちつつも、日常の味や使用感を損なわず、自然に取り入れられる点が、難消化性デキストリンの大きな利点です。一方で、過剰に摂取するとお腹が緩くなることもあるため、適量を守ることが推奨されます。
難消化性デキストリンとマルトデキストリンの用途の違い
-
難消化性デキストリンの主な健康効果
-
マルトデキストリンの主な用途と目的
-
特定保健用食品での使われ方の違い
-
飲料や食品への配合しやすさ
-
機能性表示食品での活用実績
-
イソマルトデキストリンとの違いと関係性
難消化性デキストリンの主な健康効果
難消化性デキストリンは、腸内環境の改善や生活習慣病予防に役立つ水溶性食物繊維として注目されています。消化されにくい構造を持つため、小腸では吸収されずに大腸まで届き、そこで腸内細菌のエサとなることで様々な生理機能を発揮します。
代表的な効果としては、整腸作用が挙げられます。腸内の善玉菌を増やし、便のかさや柔らかさを整えることで、排便リズムの正常化が期待できます。実際、難消化性デキストリンを含む飲料の摂取により、排便回数や便の量が増えたという臨床試験結果も報告されています。
また、血糖値の上昇を抑える働きも見逃せません。糖質の吸収スピードを緩やかにすることで、食後の急激な血糖値上昇を防ぐ効果があります。さらに、脂質代謝にも良い影響を与えるとされ、食後の中性脂肪の上昇を抑える作用も確認されています。
加えて、内臓脂肪の低減やミネラルの吸収促進作用も報告されており、トクホや機能性表示食品の成分として多数の商品に活用されています。
ただし、摂りすぎるとお腹がゆるくなることもあるため、製品ごとに推奨されている摂取量を守ることが大切です。
マルトデキストリンの主な用途と目的
マルトデキストリンは、でん粉を部分的に加水分解して得られる消化性の糖類で、主にエネルギー補給や食品の機能性向上を目的として利用されます。甘味が少なく、分子構造が比較的大きいため、血糖値への影響は穏やかですが、消化吸収は速やかに行われます。
最もよく使われているのは、スポーツドリンクや栄養補助食品です。運動中や回復期にエネルギーを効率よく補給できる素材として、アスリートや高齢者向けの製品に多く含まれています。吸収が早いという特性が、疲労回復や持久力維持に役立ちます。
また、加工食品の品質改良にも使われています。例えば、粉末飲料のかさ増し、味の調整、流動性の確保など、製造面での利便性が高いため、飲料やスープ、スナック菓子など幅広い食品に配合されています。
甘味がほとんどないため、砂糖の代替として甘さを控えたい食品にも使われることがあります。一方で、血糖値が気になる方や糖質制限中の方にとっては注意が必要です。マルトデキストリンは消化されやすいため、摂取量が多くなると血糖値を上げやすくなる可能性があります。
このように、マルトデキストリンは健康効果というよりも、「機能性とエネルギー供給」という目的で幅広く利用されている素材です。
特定保健用食品での使われ方の違い
特定保健用食品（トクホ）は、国が有効性と安全性を審査し、特定の健康効果を表示することを許可した食品のことです。この制度の中でも、難消化性デキストリンとマルトデキストリンは明確に異なる目的で使用されています。
難消化性デキストリンは、主に「食後の血糖値の上昇抑制」「整腸作用」「中性脂肪の上昇抑制」などを目的として、多数のトクホ製品に採用されています。特に飲料分野での利用が多く、消費者庁のデータ（2017年時点）では、難消化性デキストリンを関与成分とするトクホ製品は約379品目あり、そのうち飲料が約8割を占めていました。
一方で、マルトデキストリンはトクホの関与成分としてはほとんど使用されていません。これは、マルトデキストリンが体内で消化吸収されるため、健康効果を謳う目的の機能性素材ではなく、あくまでも栄養補助や製品の質を整える補助的成分として位置づけられているためです。
つまり、難消化性デキストリンは「健康機能をもたらす主成分」、マルトデキストリンは「製品の構造を整える補助成分」というように、トクホでの使われ方には大きな違いがあります。
飲料や食品への配合しやすさ
食品や飲料への配合のしやすさという点でも、難消化性デキストリンとマルトデキストリンは異なる特性を持っています。ただ、どちらも無味・無臭に近く、水に溶けやすいため、扱いやすい素材であることに変わりはありません。
特に難消化性デキストリンは、溶解性が高く、低粘度で、味や色への影響が非常に少ないという利点があります。そのため、透明な飲料やスープ、ゼリーなどの食品に加えても風味を変えにくく、自然な形で食物繊維を補給することができます。こうした特性が評価され、トクホや機能性表示食品としても多くの飲料に採用されています。
一方のマルトデキストリンも、加工食品全般に使いやすい素材として広く使われています。たとえば、粉末飲料やサプリメントのかさ増し、乳製品やスナックのテクスチャー調整、味のバランス補正など、製造工程での安定性を高める目的に適しています。ただし、マルトデキストリンは加熱や酸に弱い種類もあるため、製品の種類によっては用途が制限されることがあります。
このように、難消化性デキストリンは「機能性を活かしつつも違和感なく配合できる成分」として、マルトデキストリンは「製品の形や味を整える調整用成分」として、それぞれの強みを活かして使い分けられています。
機能性表示食品での活用実績
難消化性デキストリンは、機能性表示食品の分野でも多くの実績を持つ成分です。特定保健用食品と違い、機能性表示食品制度では企業が自ら科学的根拠を示し、消費者庁に届け出ることで「機能性」をうたうことができます。国の個別審査はありませんが、安全性やエビデンスが求められるため、信頼性は一定以上確保されています。
難消化性デキストリンは、この制度のスタートである2015年以降、血糖値の上昇抑制や整腸作用、脂肪吸収の抑制などを関与成分とした製品に幅広く使われてきました。2017年末時点ですでに170件を超える届け出が受理されており、現在ではさらに多くの製品に使用されています。
多くの機能性表示食品においては、主に飲料タイプ（お茶、炭酸水など）や粉末サプリ、食事と組み合わせて摂る機能性食品として登場しています。その背景には、難消化性デキストリンの無味・無臭・低粘度であること、そして製品中に溶け込みやすいという物性の優秀さがあります。
一方、マルトデキストリンはこの制度において機能性成分としての届出はほとんどなく、あくまでサポート素材として使われることが大半です。
イソマルトデキストリンとの違いと関係性
難消化性デキストリンとイソマルトデキストリンは、いずれも水溶性食物繊維に分類される成分ですが、構造や製造方法、機能性において異なる特徴を持っています。
まず、原料はいずれもトウモロコシ由来のでん粉ですが、製造法が異なります。難消化性デキストリンは酸や酵素によって焙焼処理を行い、消化されにくい構造を残すように加工されます。これに対して、イソマルトデキストリンはナガセヴィータ独自の「酵素変換技術」を使って、特定のグルコース結合を作り出しながら製造されます。
前述の通り、どちらもヒトの小腸で吸収されずに大腸まで届くため、整腸効果や血糖値への影響を抑える効果が報告されています。ただし、イソマルトデキストリンは特に腸内フローラ改善や満腹感持続、皮膚性状の改善など、生活の質（QOL）に関わる機能にも焦点を当てた研究が多く進められています。
物性の面では、どちらも低粘度・高溶解性で扱いやすいですが、イソマルトデキストリンはさらに「味・におい・色への影響が極めて少ない」という特長を活かし、より幅広い食品への応用が進んでいます。
このように両者は水溶性食物繊維という共通点を持ちつつも、開発背景と得意とする機能性の領域に違いがあるため、製品の目的に応じて選ばれています。目的が重なる部分もありますが、それぞれが補完し合う関係とも言えるでしょう。